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コラム

2022.12.06

人事ならおさえておきたい労働基準法の基礎知識について解説します

労働三法の一つである「労働基準法」は、労働問題にまつわる代表的な法律です。賃金や労働時間、休暇等について一定のルールを定めて、これに違反した企業には罰則を与えることで従業員の権利を守っています。労働基準法の下、従業員と会社との間でトラブルが起こることも少なくありません。そうしたトラブルを未然に防ぐためにも、人事担当者は法律について日頃から学んでおくことが重要です。そこで今回は、人事が知っておくべき労働基準法の基礎知識を解説します。

労働基準法とは?

 労働基準法とは、労働契約、賃金、労働時間、休息、休日、有給休暇、就業規則といった労働条件の最低基準を定めた法律です。その基本理念は主に2つあります。1つは、企業が労働者を雇う際に設定する労働条件の最低基準を定め、労働者の生活を守ること。もう1つは、労働者・使用者が対等な立場で労働条件を定めることです。使用者が、労働者と労働契約を結ぶ際は、労働基準法に則った条件で契約を結ばなければなりません。仮に労使が合意した契約のなかに労働基準法の基準を下回る内容があった場合は、強制的に労働基準法の基準に置き換えられることになります。つまり企業は、この最低基準を上回る条件で労働契約を交わさなければならないというわけです。また労働基準法に違反した使用者に対しては、罰則が科せられる場合もあるので注意しましょう。

 対象は正社員だけでなく、パート・アルバイト、契約社員、派遣社員など事業に従事するすべての労働者となります。ただし、フリーランスは対象外です。また労働基準法第41条で規定される以下の労働者は、法定労働時間や休憩・休日の規制適用対象外となります。

・農業,畜産業,養蚕業,水産業に従事する者(林業を除く)

・管理監督者の地位にある者または機密の事務を取り扱う者

・監視または断続的労働に従事する者で,使用者が行政官庁の許可を受けた者

 

押さえておきたい12の基本ルール

 労働基準法は、全12章で構成されています。以下は、各章の条文または概要の一部です。果たして皆さんは、どれくらいご存知でしょうか。人事なら知っておかなければならない最低限の知識ですので、ぜひチェックしてみてください。

 

□労働条件の明示(労基法第15条)

労働契約の締結に際して、労働者に賃金、労働時間、その他の労働条件を明示しなければなりません。

□解雇の予告(労基法20条)

労働者を解雇する場合、少なくとも30日前にその予告をしなければなりません。

□賃金支払い4原則(労基法24条)

賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を毎月1回以上、一定期日を定めて支払わなければなりません。

□労働時間の原則(労基法32条)

①労働者に休憩時間を除き1週間について40時間を超えて労働させてはなりません。

1週間の各日については、労働者に休憩時間を除き1日について8時間を越えて、労働させてはなりません。

□休憩(労基法34条)

労働時間が6時間を超える場合は少なくとも45分、8時間を超える場合においては少なくとも1時間の休憩時間を労働時間の途中に与えなければなりません。

□休日(労基法35条)

毎週少なくとも1日の休日か、4週間を通じて4日以上の休日を与えなければなりません。

□時間外および休日の労働(労基法36条)

法定労働時間(18時間、週40時間)を超える時間外労働及び休日勤務などを命じる場合、労組などと書面による協定を結び労働基準監督署に届け出ることが義務付けられています。

□時間外、休日および深夜労働の割増賃金(労基法37条)

時間外、深夜(原則として午後10時~午前5)に労働させた場合には25分以上、法定休日に労働させた場合には35分以上の割増賃金を支払わなければなりません。

□年次有給休暇(労基法39条)

労働者の雇入れ日から6ヶ月継続し、全労働日の8割以上の日数に出勤した場合は必ず10日間の有給休暇を付与しなければなりません。

□就業規則(労基法89条)

常時10人以上の労働者を雇用する企業は、就業規則の作成および届出が義務づけられています。

□制裁規定の制限(労基法91条)

労働者に対して減給の制裁を定める場合、その減給は、1回の額が平均賃金の1日分の半額を超え、総額が一賃金支払期における賃金の総額の10分の1を超えてはなりません。

□周知義務(労基法106条)

就業規則は、常時各作業場の見やすい場所へ掲示し、または備え付けること、書面を交付すること、その他の厚生労働省令で定める方法によって、労働者に周知させなければなりません。

 

働き方改革による労働基準法改正のポイント

 少子高齢化による人手不足や、過重労働、育児・介護など、社会構造の変化や社会問題に対応するため、2018年に「働き方改革関連法」が成立。これに伴い、関連法令である労働基準法も、長時間労働の是正、非正規雇用の処遇改善、働きやすい環境整備の3つの柱をテーマに改正されました。なかでも注目されたのが、長時間労働の是正を目的とした時間外労働の上限規制の見直しです。以前は残業時間の上限はありませんでしたが、改正後は残業時間の上限を原則として月45時間・年360時間とし、臨時的な特別の事情がある場合を除いて、これを超えることはできなくなりました。またその他にも、年5日の有給休暇付与の義務付け、勤務の終業と翌日の始業の間に一定の休息時間を設ける勤務間インターバル制度導入、中小企業における月60時間超の残業代の割増賃金の見直しなどが行われ、長時間労働の是正に向けた取り組みが強化されています。

 

労働基準法は労働者を守るための法律

労働基準法は、会社よりも弱い立場に置かれることが多い労働者を守るための法律です。また賃金不払い、最低賃金法違反、違法な時間外労働や休日労働をさせたなどの法律違反は、労働者からの通報で発覚することも少なくありません。こうした違法行為に対しては、事業規模を問わず厳しい罰則が課されます。知らずに行ってしまった法律違反を防ぐためにも、企業や人事担当者は労働基準法をきちんと学習し、法律遵守に努めましょう。
(関連コンテンツ:人事として最低限知っておきたい労働法の基礎知識や注意点を解説します

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