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コラム

2022.02.04

有給休暇の取得促進のために、今求められているものとは? 定義や取得促進の施策について解説します

仕事熱心な日本人は、一方で休み下手とも言われています。有給休暇取得率は世界の中で長年最下位を推移しており、多くの労働者にとって、有給休暇は「取りづらい」ものだったのです。そうした中、2019年の労働基準法改正により、年5日の有給休暇取得が義務化されました。これによって取得日数や取得率は徐々に改善され始めています。果たして日本人の休暇に対する意識はこのまま変わっていくのでしょうか。そこで今回は、そんな有給休暇の定義や付与要件、取得促進の施策などについて解説していきます。

有給休暇の定義と付与される条件

有給休暇とは、労働基準法第39条によって定められており、一定期間勤続した労働者に対して心身の疲労を回復しゆとりある生活を保障するために、1年ごとに毎年一定の日数が付与される休暇のことです。労働者にとって最大のメリットは、有給で休暇を取れること。すなわち取得しても給与が減額されることはありません。正式名称は年次有給休暇で、略して有給休暇、年次休暇、年休、有休などと呼ばれます。有給休暇の最低日数は10日で、連続して取得することも分割して取得することも可能。また有給休暇の取得に使用者の承認は必要なく、利用目的も原則自由です。
有給休暇が付与される要件は2つあります。1つは、雇用した日から6カ月間が経過していること。そしてもう1つは、その期間の全労働日の8割以上出勤したこと。この要件を満たしていれば、正社員だけでなく、契約社員や派遣社員、パート・アルバイト、さらに管理職なども対象に含まれます。正社員に付与される有給休暇日数は、法律で定められた10日分の有給休暇に加え、入社日からの勤続年数に応じて増加。またパート・アルバイトなど正社員よりも勤務日数が少ない労働者に対しては、所定の労働時間や日数、勤続年数に応じて比例付与が行われます。詳細は、以下の図の通りです。

●正社員の付与日数

●パートタイム労働者(週4日以下かつ30時間未満勤務)の付与日数

有給休暇は、1日単位で取得することが原則とされています。ただし、雇用主と労働者の間で労使協定を締結することで、半日単位や時間単位での付与も可能です。また法定では入社6カ月が経過してから付与することになっていますが、会社の方針次第では、前倒し取得や翌年度への持ち越し取得も可能となっています。ちなみに有給休暇には使用期限があり、消滅時効は2年です。労働者にとってはせっかく権利として取得した有給休暇ですので、しっかりと期限を意識しておく必要があるでしょう。

 

なぜ日本人の有休休暇取得率は他国と比べて低いのか?

厚生労働省が昨年発表した「就労条件総合調査」によると、平成31年・令和元年の1年間に企業が付与した有給休暇の日数は、労働者1人平均18.0日で、そのうち労働者が実際に取得した日数は10.1日となっています。取得日数は昭和59年以降、過去最多で、また取得率も56.3%と、こちらも過去最高となりました。しかしこうした傾向も、世界と比較してみると、まだまだ高い水準とは言えません。エクスペディアが実施した「有給休暇の国際比較調査」によると、2020年はコロナの影響で世界的に有給休暇の取得日数が減っているのですが、日本も例年の10日に対して2020年は9日と、一日減少しました。これは取得日数が最も多いドイツやフランス(ともに25日)と比較すると半分以下の数字です。

 また2018年に実施された同調査によると、日本人の58%が有給休暇の取得に「罪悪感がある」と回答。世界で最も割合が多い結果となりました。さらに「自分は今よりも多くの有給休暇をもらう権利がある」と答えた日本人は54%と、こちらは世界で最も低い結果となっています。こうした傾向は、働くことを美徳とする日本人特有の意識や自分だけ休みづらいという同調圧力などに起因していると考えられ、今後有給休暇の取得日数や取得率をさらに向上させていくためには、日本人全体で意識を変えていく必要があるでしょう。

 

誰もが気兼ねなく休暇を取れるために、今こそ休み方改革を

有給休暇の低い取得率を改善するために、国も動き始めています。2019年に労働基準法が改正され、有給休暇が年に10日以上付与される労働者に対しては、年に5日の有給休暇を取得させなければならない旨が義務付けられました。この5日分の有給休暇については、使用者が取得時期を指定することが可能です。また罰則規定も設けられ、年に5日の有給休暇を取得させなかった場合、労働者1人あたり30万円以下の罰金が科されることがあります。一方で厚生労働省では、年に5日の有給休暇取得はあくまで最低限の基準と定めており、労働者が気兼ねなく、より多くの有給休暇を取得できるように、企業に対して労働環境の整備などを働きかけています。

では企業側は、具体的にどのような施策に取り組めばよいのでしょうか。有効な対策の一つとして挙げられるのが、有給取得奨励日の設定です。有給取得奨励日とは企業が労働者に対して有給休暇の取得を推奨する日のことで、例えば年末年始やゴールデンウィークなどの大型連休の中に有給取得奨励日を設けることで、労働者が連休を取りやすくします。またその他にも、飛び石連休中の平日や土日前後等に有給休暇を取得することで連続休暇を1日プラスする「プラスワン休暇」など、有給休暇の取得促進に向けて独自の取り組みを進める企業も少なくありません。労働者が休みやすい環境を作るために、ぜひこの機会に休み方改革に取り組んでみてはいかがでしょうか。

 

まとめ

日本人の有休取得率は他国と比較すると非常に低く、その背景には「働くことは美徳である」、「みんなに迷惑をかけたくない」といった日本人特有の精神や配慮がうかがえます。しかし企業が労働者に有給休暇を付与することは、労働基準法39条で定められたれっきとした義務であり、また有給休暇の取得は、従業員の心身の健康や快適さを保つことはもちろん、モチベーションや生産性、エンゲージメント向上などにも大きく寄与するものです。コロナ禍で働き方や仕事の在り方が見直されている今だからこそ、企業は労働者が気兼ねなく休暇を取れる体制の整備に注力する必要があります。

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