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コラム

2022.02.04

人事として最低限知っておきたい労働法の基礎知識や注意点を解説します

賃金格差、労災、パワハラ・セクハラ、労働条件の不利益変更など、労働に関する問題は多岐にわたります。また昨今は、ジョブ型雇用や副業、コロナ禍におけるテレワーク拡大等によって、企業や組織と従業員の関係性も複雑になってきました。日頃からこうした諸問題と対峙する人事にとって、労働法を正しく認識し、適切に取り扱うことは必要不可欠なことです。そこで今回は、労働法の基本的な知識や取り扱い上の注意点などを解説いたします。

労働法とは、原則的に従業員を保護するためのもの

労働法とは、労働問題にまつわる法律全体の総称のことです。人事業務の領域は、採用から入社、事務手続き、労務管理、社内トラブル、退職まで非常に多岐にわたりますが、これらの多くは労働法と深く関わっています。よって人事は労働法に関する正しい知識や情報を持つと同時に、それに則った判断しなければなりません。
労働法の中の代表的な法律として、「労働基準法」、「労働組合法」、「労働関係調整法」の労働三法が挙げられます。この3つの法律は、労働者の権利の根幹を定めており、数ある労働法の中でも最も基礎となるものです。またその他に人事に関わる主要な労働法としては、労働契約法、最低賃金法、労働安全衛生法、労働者災害補償保険法、労働者派遣法、パートタイム・有期雇用労働法などが挙げられますが、いずれの法律も、従業員と企業の間で労働契約を結ぶ際、従業員にとって不利な契約内容とならないように、原則的に従業員を保護することを目的に定められています。

 

「労働三法」と「労働三権」の関係性とは?

 労働三法とは、憲法が保障する労働三権を具体的に示した法律です。憲法28条の「労働基本権」では、労働者が集団を作ることで使用者と対等な立場で交渉ができるよう、「団結権」、「団体交渉権」、「団体行動権」という労働三権を保障しています。労働三権の詳細は、以下の通りです。

●団結権…労働者が労働組合を結成する権利
●団体交渉権…労働者が使用者と団体交渉する権利
●団体行動権…労働者が要求実現のために団体で行動する権利

これらの権利が保障されてはじめて、使用者よりも弱い立場になりやすい労働者の地位を守ることが可能になります。そしてこれらの権利を守るための法律として、労働三法は重要視されているのです。では続いて、労働三法の詳しい概要について見ていきましょう。

労働基準法(労基法)

労働三法の中で最も耳にする機会が多いのが、労働基準法でしょう。これは労働条件の最低基準を定めた法律で、労働契約、賃金、労働時間、休息、休日および年次有給休暇、就業規則などの項目を規定しています。対象は正社員だけでなく、パート・アルバイト、契約社員、派遣社員など事業に従事するすべての労働者です。使用者が労働者と労働契約を結ぶ際は、この労働基準法に則った条件で契約を結ぶ必要があり、仮に労使が合意した契約でも労働基準法の基準を下回る内容があった場合は、強制的に労働基準法の最低基準に置き換えられることになります。また労働基準法に違反した使用者に対しては、罰則が科せられる場合もありますので、注意が必要です。

労働組合法(労組法)

労働組合法は、前述した労働三権を具体的に保障する法律です。具体的には、労働条件の交渉や労働組合の組織・団結を保護したり、また労働協約締結のための団体交渉を助成することなどを目的としています。一方で、こうした労働組合の活動を妨害することを、不当労働行為として禁じています。例えば会社側が組合による団体交渉の申し入れを正当な理由なく拒んだり、また誠実に交渉を行わない場合、団体交渉拒否と見なされるので、こちらも注意が必要でしょう。

労働関係調整法(労調法)

労働関係調整法は、使用者と労働者の間の労働争議を予防し、仮に対立が起こった場合は解決へと導くための法律です。具体的には、国や地方公共団体が設置した労働委員会が必要に応じて、斡旋や調停、仲裁などを行います。また労働組合法と関連しながら、労働関係の公正な調整を図っていきます。

 

労働法の取り扱いに関して人事が注意すべきポイントとは?

人事と労働法は非常に密接に関わり合っているため、常に正確な知識や情報を持って、適性に取り扱わなければなりません。例えば、法定時間外労働に対する割増賃金は通常25%以上の率で計算されますが、1カ月60時間を超える法定時間外労働に対しては、使用者は50%以上の率で計算した割増賃金を支払う必要があります。このように特例や例外もあるため、勝手な思い込みをせず、入念に調べておくことが大切です。また労働法は、時代や社会情勢に合わせて改定されていくため、知識や情報は常にアップデートし、最新の法律を取り扱うよう心掛けましょう。
インターネット等で検索すると、労働問題に関するさまざまな判決事例を目にすることができます。すべてが自社に当てはまるわけではありませんが、そういった情報にも常にアンテナを張って、「もし似たような問題が起こった場合、どう対処すべきか」など、自社に置き換えたさまざまなケースを日頃から想定しておくことも大切です。

 

まとめ

労働法とは、労働問題に関する数多くの法律をひとまとめにした総称です。労働法の中でも「労働基準法」「労働組合法」「労働関係調整法」の労働三法は、労働者の権利の根幹を定める最も重要な法律とされています。またその他に人事に関わる主要な労働法としては、労働契約法、最低賃金法、労働安全衛生法、労働者災害補償保険法、労働者派遣法、パートタイム・有期雇用労働法などが挙げられます。いずれも労働契約が従業員にとって不利な内容にならないよう、原則的に従業員を保護することを目的に定められています。

労働法には例外や特例があり、また社会情勢に合わせて改正などもされるため、ネット等に掲載されている情報が古くなっていたり、間違っているケースも少なくありません。そのため人事担当者は、常に最新の正しい知識や情報をインプットして、また労働問題に関するさまざまな判決事例なども参考にしながら、自社に置き換えたさまざまなケースを想定しておく必要があります。

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