2022.09.09
残業代に関する基礎知識と計算方法についてわかりやすく解説します
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残業および残業代の定義を知る
残業には「法定内残業」と「法定外残業」の2種類があります。法定内残業とは、労働基準法で定められた法定労働時間(原則1日8時間、1週間40時間)を超えない範囲の残業のことです。一方、法定外残業(時間外労働)とは、法定労働時間である1日8時間を超える残業時間のことと定義されています。そのため例えば、所定労働時間が7時間(9時から17時までの勤務で、休憩が1時間)の会社で、20時まで残業した場合は、18時までの1時間が法定内残業、残りの2時間が法定外残業となるわけです。
残業代の基本的な計算式と割増率
法定内残業と法定外残業では、残業代の計算方法も異なります。以下が計算式です。
法定内残業の場合
計算式:1時間あたりの賃金額×法定内残業時間数
法定外残業の場合
計算式:1時間あたりの賃金額×法定外残業時間数×1.25(割増率25%)
ちなみに1時間あたりの賃金額とは、基礎賃金(基本給)のことであり、家族手当、通勤手当、別居手当、子女教育手当、住居手当、臨時に支払われた賃金、1カ月を超える期間毎に支払われる賃金などは含まれません。
また割増賃金に関しては、所定労働時間を超えて働くケースとして残業以外にも深夜労働や休日労働などがありますが、これらは種類や組み合わせによって割増率が異なります。法定外残業は25%、深夜労働は25%、休日労働は35%、さらに法定外残業+深夜労働の場合、割増率は50%です。
月給30万円の社員が2時間残業した場合は?
ここで、具体的なケースを想定しながら実際に計算してみましょう。法定外残業代を計算する場合、まずは1時間当たりの賃金額を算出する必要があります。
1時間当たりの賃金額
=月給÷1カ月の平均所定労働時間
1カ月の平均所定労働時間
=(365日-1年間の所定休日日数)×1日の所定労働時間÷12
では、例えば以下のようなケースでは、残業代はいくらになるのでしょうか。
月給:30万円
年間休日数:125日
1日の所定労働時間:8時間
法定外残業:2時間
この場合の1カ月の平均所定労働時間数は、(365日−125日)×8時間÷12=160時間ですので、1時間あたりの賃金額は30万円÷160時間=1875円。したがって法定外残業代は、1875円×2時間×1.25≒4688円となります。
残業代の支給対象とは?
残業代は必ずしもすべての従業員に支払う必要はありません。管理監督者および役職者については、原則的に残業の支払い対象外となっています。労働基準法における管理監督者とは、労働条件の決定、その他労務管理について経営者と一体的な立場にある者とされており、この場合は、労働時間・休憩・休日の規定は適用されませんので、残業代を支払う必要はないのです。ただし、役職者に関しては注意が必要です。課長などの肩書がついていたとしても、必ずしも管理監督者に該当するわけではありません。そのため単に役職名ではなく、実際の職務内容や権限の有無、裁量の度合い、待遇などによって判断されます。また管理監督者であっても深夜勤務については規定が除外されませんので、午後10時から翌朝5時まで働いた場合には、深夜勤務手当の支払いが必要となります。
さらに職種によっても対象外となるケースがあります。例えば第一次産業に従事する労働者や、機密の事務を取り扱う労働者、監視労働に従事する労働者、断続的労働に従事する労働者、宿日直勤務者などは、時間外労働に対する割増賃金は適用されません。
またフレックスタイム制や変形労働時間制で働く労働者に対しては、特殊なルールがあるため、注意が必要です。フレックスタイム制の場合は、1日単位ではなく、あらかじめ定められた期間内の総労働時間を超過した時間が残業時間として扱われます。一方、変形労働時間制の場合は、残業を以下のように考えます。
1日単位
8時間を超える労働時間が定められている日は、その時間を超えた分が残業時間
8時間を超えない労働時間が定められている日は、8時間を超えた分が残業時間
1週間単位
40時間を超える労働時間が定められている週は、その時間を超えた分が残業時間
それ以外の週は、40時間を超えた時間が残業時間
1カ月単位
変形労働時間制の対象期間の法定労働時間(週平均40時間)を超えた分が残業時間
まとめ
今回ご紹介したように、残業代の計算方法は大変複雑な仕組みとなっています。そのため単に計算式だけを理解しておけばよいというものではなく、実労働時間や支給対象などいろいろな要素を考慮しなければなりません。残業代を正しく支払うために、基本をしっかり理解するとともに、計算ツールなどを有効に活用しましょう。