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コラム

2022.05.27

今さら聞けない36協定の基礎知識。定義や条件について徹底解説します

労働基準法において労働時間は、原則として1日8時間、1週40時間以内とされており、企業が法定労働時間を超えて従業員に労働をさせる場合は、「労働基準法第36条に基づく労使協定の締結」と「所轄労働基準監督署長への届出」が求められます。これがいわゆる36協定(サブロク協定)と呼ばれるものです。36協定は2019年の働き方改革関連法の施行によって内容が大幅に変更されました。締結の条件や上限規制、割増賃金率なども非常に複雑なため、人事や担当者は正しい知識や情報を身につけておく必要があります。

36協定が必要なケースと締結のための条件

 36協定とは、企業が法定労働時間(18時間・1週間で40時間)を超えて労働(残業)を命じる場合に必要となる協定のことです。正式名称は「時間外・休日労働に関する協定届」ですが、労働基準法の36条に定められていることから、“サブロク協定”と呼ばれています。2019年に働き方改革関連法が施行される以前は、法律上、残業時間の上限はありませんでしたが(行政指導のみ)、改正後は残業時間の上限を原則として月45時間・年360時間とし、臨時的な特別の事情がある場合を除いて、これを超えることはできなくなりました。もし法定労働時間を超えた時間外労働を課す場合、もしくは法定休日(11日以上の休日、または44日以上の休日)に労働を課す場合は、36協定の締結および所轄労働基準監督署長への届出が必要となります。

 36協定を締結する際は、労働者の過半数で組織する労働組合(過半数組合)、または過半数組合がない場合、労働者の過半数を代表する人物(過半数代表者)と、あらかじめ書面による協定を交わさなければなりません。要件を満たしていない過半数組合や適正に選出が行われていない過半数代表者と36協定を締結し、届出しても、無効となり、労働者に法定外の時間外・休日労働を行わせることはできませんので、注意しましょう。また届出する際には、時間外労働に携わる業務の種類や、1日・1カ月・1年当たりの時間外労働の上限などもあらかじめ決めておく必要があります。

 

特別条項付き36協定にも上限規制がある

 前述したように36協定は、時間外労働に対して「月45時間・年360時間」という上限を設定していますが、臨時的に限度時間を超えて時間外労働を行わなければならない特別の事情が予想される場合には、「特別条項付き36協定」を結ぶことができます。では特別の事情とはどのようなケースでしょうか。「何となく忙しくなりそうだから」、「業務の都合上必要だから」といった曖昧な理由では認められません。「通常の受注量を大幅に超える受注が集中し、納期がひっ迫する可能性があるため」といった具体的な理由が必要となります。

 特別条項付き36協定を結んだとしても、無制限に時間外労働が行えるわけではありません。特別条項で時間外労働の上限を延長できる月は1年の半分を超えてはならず、年6回までとされています。あくまでも繁忙期や緊急時における例外的な処置であるため、1年の半分を超えてしまうと例外扱いされなくなるというわけです。また時間外労働の上限は、年720時間以内(法定休日労働を除く)、月100時間未満(単月で法定時間外労働と法定休日労働を合わせた時間)となっています。さらに複数月(26カ月)の時間外・休日労働の平均が、すべて80時間以内である必要もあります。

 ちなみに特例として36協定の適用外となる業種・職種もあり、建築関連事業や大規模機械・施設の据え付け工事、自動車運転業務、新技術・新商品の研究開発業務、郵政事業の年末年始業務などがそれに当たります。これらの業種については人手不足の状況にあることが考慮されるなど労働条件が36協定の規定にそぐわないため、20243月までは特別条項を適用した場合でも、時間外労働の上限はありません。

 

36協定の締結に当たって留意すべきポイント

 使用者は、労働者に時間外労働、休日労働、深夜労働を行わせた場合、法令で定める割増率以上の率で算定した割増賃金を支払わなければなりません。割増賃金率は、時間外労働で25分以上、休日労働で35分以上、深夜労働で25分以上となっており、割増賃金額は、「1時間当たりの賃金額」×「時間外労働、休日労働、深夜労働を行わせた時間数」×「割増賃金率」という計算式で算出されます。

 36協定には有効期間があります。ほとんどの場合、最長1年ごとの契約となり自動更新はできません。期間が過ぎる前に再締結する必要があるため、有効期間はしっかりと確認しておきましょう。また36協定の締結・届出をせずに時間外労働をさせた場合や、36協定で定めた時間を超えて時間外労働をさせた場合は法律違反となり、6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金が課せられるので注意する必要があります。違反を防止するためにも、日頃から従業員の就業管理や勤怠管理をしっかりと行っておくことが重要です。

 労働時間は長くなればなるほど心身の疾患や過労死のリスクが高まります。よって36協定の範囲内であっても、時間外労働や休日労働は必要最小限にとどめましょう。限度時間を超えて労働させるケースはもちろん、限度時間が適用除外・猶予されている事業・業務についても、限度時間を勘案し、労働者の健康・福祉を確保するよう努めてください。

 

まとめ

企業が労働者に対して法定労働時間(18時間・1週間40時間)を超えて労働を命じる場合、36協定を締結する必要があります。また36協定を締結していても、残業時間の上限は原則として月45時間・年360時間となっており、臨時的な特別の事情がない限り、これを超えることはできません。もし臨時的に限度時間を超えて時間外労働を行う必要がある場合には、特別条項付き36協定を結ぶことが可能です。しかし、特別条項付き36協定を締結していても、年720時間以内、複数月平均80時間以内(休日労働含む)、月100時間未満(休日労働含む)を超えることはできなくなりました。36協定に違反した場合には、罰則が課せられるので、注意する必要があります。また企業や人事部は、そもそも時間外労働や休日労働を発生させない、もしくは極力減らすべく勤怠管理や事業の達成目標・スケジュールなどを慎重に管理する必要があるでしょう。

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